「罪さん・・・ッ! ぅあンっ! あッ、あぁっ!! は、んぁあ・・・ッ!」
久留間探偵事務所の一室で、薄明かりの中、一組の男女が交わっていた。
一人は久留間 罪。久留間探偵事務所の所長にして、“魔”を操る能力を持つ術者だ。
そして、女の名前は猟華。彼と契約を結んだ三人の淫魔の一人である。
部屋の中は猟華の身体から放たれる、男女問わず淫乱な心持ちにさせてしまう魔力を持った淫の妖気で満ちている。
だが、罪にはそんな事はまるで関係ないようだ。妖気の影響を受けず、猟華を存分に抱いていた。
久留間探偵事務所の一室で、薄明かりの中、一組の男女が交わっていた。
一人は久留間 罪。久留間探偵事務所の所長にして、“魔”を操る能力を持つ術者だ。
そして、女の名前は猟華。彼と契約を結んだ三人の淫魔の一人である。
部屋の中は猟華の身体から放たれる、男女問わず淫乱な心持ちにさせてしまう魔力を持った淫の妖気で満ちている。
だが、罪にはそんな事はまるで関係ないようだ。妖気の影響を受けず、猟華を存分に抱いていた。
「あッ! んはぅ、ぁう、ああ! あくぅうんん・・・ッ! ダメッ・・・! ひ、ぁぁぁあん!! ダメッ、そこ、そんな、つ、強くぅんはぁあ! ああぁあぁ~~ッ!!」
男を淫欲の虜にし、好きなように陵辱する事が出来る猟華が、罪の性技の前に成す術も無く翻弄され、悶え狂っていた。
罪の滾った肉棒が肉壺に突きこまれ、乳房を揉みしだかれ、充血した肉豆を転がされ、口腔を舌で嬲られる。
その度に、猟華の身体に途方も無い快感が駆け巡る。
真紅に輝く猟華の瞳が、許しを請うように罪を見る。
淫魔の本性を現してなお、猟華は罪から与えられる快感に全身を打ちのめされているのだ。
「ダメェ、もうダメェ~ッ! イッちゃうぅ! 私! イッちゃいますぅッ!!」
「ああ・・・俺も、そろそろ・・・っ!」
罪の動きが激しくなり、猟華は罪の身体に両手両脚を絡めた。
最後の瞬間まで一つに繋がっているように、しっかりとしがみ付く。
「ひぁっ! ああ、下さい・・罪さんの、下さい・・・ッ! い、一緒に・・・あッ? ぁ、あ・・・くぅ、ふぁ、あ、ぁああぁあぁああぁッ!!」
罪の動きが止まり、二人の身体が完全に密着する。
放たれた精液を一滴たりとも逃がすまいと、猟華の蜜壺は収縮を繰り返し、肉棒を刺激する。
その刺激に答える様に、罪の肉棒は精液を残らず猟華の膣内へと吐き出した。
燃える様な罪の精液を子宮の奥に注ぎ込まれ、猟華は全身を震わせた後にベッドの上で弛緩する。
罪も猟華の横に、息を荒くして寝転がった。
「はぁ・・・。ん、罪さん・・・チュ、ん・・・」
行為が終わって、猟華は罪に軽く口付けをした。
「ん、もう・・・罪さんのイジワル。弱い所ばかり責めて・・・死んじゃうかと思いました」
「猟華の感じてる顔が可愛いからさ、つい見たくなって責めちゃうのさ」
歯の浮くような台詞をサラリと言う罪の胸に、猟華はそっと頬を寄せる。
真紅の輝きが消えた瞳をゆっくりと閉じ、心地良い眠りに落ちようとした時、床が揺れた。
「あ、・・・地震?」
「みたいだな、大した事無いみたいだけど」
地を揺らす軽い振動は数秒続き、そのままゆっくりと収まっていった。
「地震か・・・猟華と出会ったのも、地震がきっかけなんだよな」
不意に、罪が呟くように言った。
猟華が罪を見つめ、軽く笑いながら答える。
「ん・・・そうでしたね。思えばあの地震が無ければ、今、こうして罪さんに抱かれる事も無く、私はいまだに一人でいたでしょうね」
罪の胸で目を閉じた猟華は、かつて住んでいた神戸を心に描く。
そこで起こった大惨事と、罪との出会いの記憶を呼び起こし、猟華はその記憶に浸っていった。
1995年1月17日、阪神・淡路大震災発生――。
死者、六千人を超えたこの未曾有の大惨事に、各地から届けられた善意の救援物資やボランティアの人々が被災者達の大きな支えとなった。
だが、その“善意”を嘲笑うかのような犯罪が、この地では起こっていた。
人間達の間ではあまり知られてはいない様だが、間違いなく援助・救助という“光”の“影”で発生していたのだ・・・。
当時、神戸で一人静かに暮らしていた私は災害に巻き込まれはしたものの、人外の存在であるが故に怪我を負う事などは無かった。
避難場所で私は素性を隠し、ボランティアの一人として救助活動の手伝いを行っていた。
人間の事は嫌いではない。かつて、私を人間ではないと知りつつ、実の娘として迎えてくれた老夫婦が私に人間の“情”を教えてくれたからだ。
今の『猟華』という名前を与えてくれたのも、彼らだった。
もっとも、私のためにその老夫婦が命を落とす事になった時、人間の“邪”の部分も知る事になったが・・・。
その神戸で、私は彼と初めて出会った。
今でもその時の事は、鮮明に思い出す事が出来る。
何十年、何百年経とうと、この記憶が色褪せる事は無いだろう。
久留間 罪――“魔”と契約し、操る術者。
彼と出会った、あの時の事を。
ボランティア活動をしているうちに、私は佐野 春奈(さの はるな)という女性と親しくなった。
明るく、活発な性格で何よりも困っている人を見ると放っておけない、優しい人だった。
子供の頃、火事で家族を失うという悲劇の当事者である彼女はそれ故に、苦しむ人たちを放っておけないのだと、照れながら私に語ってくれた。
慌ただしい数日が過ぎ、彼女は別地区の手伝いに向かう事になり、しばらく私と離れる事になった。
「それじゃあ猟華さん、行ってきますね」
「ん、お気をつけて。無理はしないで下さいね、春奈さん」
数名のボランティアと共に、春奈さんは笑顔で出発していった。
けれど、彼女は予定よりも随分と早く、ボランティア仲間に連れられて戻って来た。
全身に傷を負い、憔悴しきった、別人と思える程にやつれた姿で・・・。
「猟華、さん・・・ただいま・・・」
「ち、春奈さん!? どうしたんですか!? 酷い・・・傷だらけじゃないですか・・・! とにかく一緒に来てください、すぐに手当てをしましょう!」
「うん・・・お願い」
傷そのものは擦り傷や引っかき傷で、軽い打撲もしていたが、どれも痕が残るような物ではなかったのが幸いだった。
けれど、手当ての間、あれだけ溌剌としていた彼女は一言も口を聞かず、ただじっと地面を見つめているだけだった。
私は彼女の身に何があったのか、聞こうとはしなかった。・・・いや、聞けなかった。
予想がついてしまったからだ。
私は手当ての終わった彼女を、ボランティア用に宛がわれた仮眠スペースに連れて行った。
「さ、春奈さん、取りあえず此処で少し眠ってください。疲れを取った方がいいです」
「うん・・・ありがとう、猟華さん。少し、寝るわ」
心身共に疲れきっていたのだろう。横になった彼女が寝付くまで、ほんの数分だった。
私は両手を合わせると、彼女の口元へ指先を近づける。
軽く“力”を込めると、指先から薄い桃色に煌めく雫が一滴、彼女の少し開いた口の中に落ちた。
(・・・これで、肉体の傷と疲れの方は十分に回復する・・・)
私が今の彼女に出来る、せめてもの行動だった。
その後、彼女を此処まで連れて来たボランティア仲間の女性から話を聞いてみると、やはり私の予想は当たってしまっていたようだ。
彼女達は移動先に着いてすぐに援助活動を始め、順調に活動は進んでいた。
だが、翌日の夜に用を足しに行った春奈さんが翌朝になっても帰って来ていない事が分かり、仲間達で探した所・・・。
「・・・では、その廃屋で・・・?」
「ええ・・・複数の人間に襲われたようで・・・。犯人達は見つかっていません。私が彼女を最初に見つけたのですが・・・」
彼女はそこで口を押さえ、嗚咽と共に言葉を繋ぐ。
「酷い姿でした・・・! 服は全て破り取られて、全身傷だらけで・・・! こんな状況下の時に、どうして、あんな酷い事が出来るのか・・・!」
こんな『状況下』だからこそ・・・なのだ。
極限の状態に置かれた人間は、時として本性を曝け出す。
別段、不思議な事ではない。
ストレスや鬱憤を発散する為に、他者を痛めつけ、苦しめ、嘲笑う。
対象が異性、ましてそれが女性ならば、陵辱行為に走ってもおかしくはない。
あるいは、情勢が混乱しているのをいい事に犯罪を犯す者もいる。
こういった輩は罪の意識も希薄だ。
犯罪行為の露見する確立が、極度に低い状態を狙ってやっているのだから。
そうする事で自分の精神を安定させ、下劣な欲望を満足させる・・・。情けないほどに弱く、惨めで憐れな“陵辱者”。
・・・私の胸の奥底で、“それ”が“ざわり”と蠢く。
“それ”は私の中を駆け巡り、押さえ込んでいる“力”を解放しようと心の内側を舐め回す。
私は“それ”をなだめ、一応の平静を取り戻した。
(この怒りをぶつける者は、私が見つける・・・! 春奈さんを汚した者に、私が相応しい罰を与えてあげましょう・・!)
「警察にも届けたんです。でも・・・まともに取り合ってくれませんでした。この大災害の中だからある意味仕方が無いのかもしれないけれど、ろくに話も聞いてくれなくて・・・。挙句の果てには『アンタの方から誘ったんじゃないのか』とか、『一人でうろつくから』だとか、まるで彼女の方に問題があったように言われて・・・! 彼女はそれまでは気丈に振舞っていたけど、それ以来すっかり元気を無くしてしまって・・・」
これもまた、珍しい事ではない。
警官とて人間だ、自分の処理能力を超えた仕事には関わりたくないと思うのは当然だろう。
だが、警官という職業を自ら選んだ以上、そのような泣き言は許されないはず。
ましてや被害者を気遣うどころか、逆に傷つける事を言うなど言語道断だ。
(・・・罰を与える必要のある者が、増えたようですね・・・!)
私は自分の拳を、知らずに強く握り締めていた。
「・・・それで彼女、そんな事があってから手当てを受けたがらなくなって・・・自暴自棄になってしまったみたいなんです。仲の良かった貴女なら大丈夫かと思って連れて来たのだけど、どうやら正解だったみたいですね」
「ん、そうでしたか・・・」
「もう、帰らせた方が良いと思うのだけど・・・」
「ん・・・本当ならその方が良いのかも知れませんが、帰っても彼女にはご家族がいらっしゃらないのです。支えてくれる恋人でもいれば話は別ですが、彼女は『居ない』と言っていました」
以前、会話の中で彼女がそんな事を言っていたのを思い出す。
一人にするのは、得策では無いように思えた。
「・・・今の彼女を一人にするのは、正直不安です。私がなるべく側に居るようにします、任せてください」
「分かりました。猟華さん、彼女をお願いしますね・・・」
春奈さんを連れて来てくれた人たちは、そのまま自分達の住む本来の地へと帰って行った。
無理もない、こんな事件が身近で起こったのだから。怯えてしまって当然だ。
私は再び春奈さんの所へ行き、眠っている彼女の手を握った。
(春奈さん、ごめんなさい。貴女の記憶を読ませてもらいます)
私は春奈さんの記憶を手探りで探り、ここ数日の体験を覗き見する事にした。
彼女を襲った悲劇、それを作り出した者達を知る為に。
(2へ続く)
あとがき
『淫魔使い』、第二話の始まり始まり~!
今回の主役は清楚なサディスト、猟華さんですw
三人の淫魔の誰かとHできるとしたら、最もためらってしまうのが彼女でしょう。
第一話の『陵辱者よ、淫夢に~』では亀頭に爪を立てたりしてますが、猟華はまだ手加減している方なんですよw
猟華を怒らせるとどうなるか・・・続きは暫しお待ちください。
男を淫欲の虜にし、好きなように陵辱する事が出来る猟華が、罪の性技の前に成す術も無く翻弄され、悶え狂っていた。
罪の滾った肉棒が肉壺に突きこまれ、乳房を揉みしだかれ、充血した肉豆を転がされ、口腔を舌で嬲られる。
その度に、猟華の身体に途方も無い快感が駆け巡る。
真紅に輝く猟華の瞳が、許しを請うように罪を見る。
淫魔の本性を現してなお、猟華は罪から与えられる快感に全身を打ちのめされているのだ。
「ダメェ、もうダメェ~ッ! イッちゃうぅ! 私! イッちゃいますぅッ!!」
「ああ・・・俺も、そろそろ・・・っ!」
罪の動きが激しくなり、猟華は罪の身体に両手両脚を絡めた。
最後の瞬間まで一つに繋がっているように、しっかりとしがみ付く。
「ひぁっ! ああ、下さい・・罪さんの、下さい・・・ッ! い、一緒に・・・あッ? ぁ、あ・・・くぅ、ふぁ、あ、ぁああぁあぁああぁッ!!」
罪の動きが止まり、二人の身体が完全に密着する。
放たれた精液を一滴たりとも逃がすまいと、猟華の蜜壺は収縮を繰り返し、肉棒を刺激する。
その刺激に答える様に、罪の肉棒は精液を残らず猟華の膣内へと吐き出した。
燃える様な罪の精液を子宮の奥に注ぎ込まれ、猟華は全身を震わせた後にベッドの上で弛緩する。
罪も猟華の横に、息を荒くして寝転がった。
「はぁ・・・。ん、罪さん・・・チュ、ん・・・」
行為が終わって、猟華は罪に軽く口付けをした。
「ん、もう・・・罪さんのイジワル。弱い所ばかり責めて・・・死んじゃうかと思いました」
「猟華の感じてる顔が可愛いからさ、つい見たくなって責めちゃうのさ」
歯の浮くような台詞をサラリと言う罪の胸に、猟華はそっと頬を寄せる。
真紅の輝きが消えた瞳をゆっくりと閉じ、心地良い眠りに落ちようとした時、床が揺れた。
「あ、・・・地震?」
「みたいだな、大した事無いみたいだけど」
地を揺らす軽い振動は数秒続き、そのままゆっくりと収まっていった。
「地震か・・・猟華と出会ったのも、地震がきっかけなんだよな」
不意に、罪が呟くように言った。
猟華が罪を見つめ、軽く笑いながら答える。
「ん・・・そうでしたね。思えばあの地震が無ければ、今、こうして罪さんに抱かれる事も無く、私はいまだに一人でいたでしょうね」
罪の胸で目を閉じた猟華は、かつて住んでいた神戸を心に描く。
そこで起こった大惨事と、罪との出会いの記憶を呼び起こし、猟華はその記憶に浸っていった。
1995年1月17日、阪神・淡路大震災発生――。
死者、六千人を超えたこの未曾有の大惨事に、各地から届けられた善意の救援物資やボランティアの人々が被災者達の大きな支えとなった。
だが、その“善意”を嘲笑うかのような犯罪が、この地では起こっていた。
人間達の間ではあまり知られてはいない様だが、間違いなく援助・救助という“光”の“影”で発生していたのだ・・・。
当時、神戸で一人静かに暮らしていた私は災害に巻き込まれはしたものの、人外の存在であるが故に怪我を負う事などは無かった。
避難場所で私は素性を隠し、ボランティアの一人として救助活動の手伝いを行っていた。
人間の事は嫌いではない。かつて、私を人間ではないと知りつつ、実の娘として迎えてくれた老夫婦が私に人間の“情”を教えてくれたからだ。
今の『猟華』という名前を与えてくれたのも、彼らだった。
もっとも、私のためにその老夫婦が命を落とす事になった時、人間の“邪”の部分も知る事になったが・・・。
その神戸で、私は彼と初めて出会った。
今でもその時の事は、鮮明に思い出す事が出来る。
何十年、何百年経とうと、この記憶が色褪せる事は無いだろう。
久留間 罪――“魔”と契約し、操る術者。
彼と出会った、あの時の事を。
ボランティア活動をしているうちに、私は佐野 春奈(さの はるな)という女性と親しくなった。
明るく、活発な性格で何よりも困っている人を見ると放っておけない、優しい人だった。
子供の頃、火事で家族を失うという悲劇の当事者である彼女はそれ故に、苦しむ人たちを放っておけないのだと、照れながら私に語ってくれた。
慌ただしい数日が過ぎ、彼女は別地区の手伝いに向かう事になり、しばらく私と離れる事になった。
「それじゃあ猟華さん、行ってきますね」
「ん、お気をつけて。無理はしないで下さいね、春奈さん」
数名のボランティアと共に、春奈さんは笑顔で出発していった。
けれど、彼女は予定よりも随分と早く、ボランティア仲間に連れられて戻って来た。
全身に傷を負い、憔悴しきった、別人と思える程にやつれた姿で・・・。
「猟華、さん・・・ただいま・・・」
「ち、春奈さん!? どうしたんですか!? 酷い・・・傷だらけじゃないですか・・・! とにかく一緒に来てください、すぐに手当てをしましょう!」
「うん・・・お願い」
傷そのものは擦り傷や引っかき傷で、軽い打撲もしていたが、どれも痕が残るような物ではなかったのが幸いだった。
けれど、手当ての間、あれだけ溌剌としていた彼女は一言も口を聞かず、ただじっと地面を見つめているだけだった。
私は彼女の身に何があったのか、聞こうとはしなかった。・・・いや、聞けなかった。
予想がついてしまったからだ。
私は手当ての終わった彼女を、ボランティア用に宛がわれた仮眠スペースに連れて行った。
「さ、春奈さん、取りあえず此処で少し眠ってください。疲れを取った方がいいです」
「うん・・・ありがとう、猟華さん。少し、寝るわ」
心身共に疲れきっていたのだろう。横になった彼女が寝付くまで、ほんの数分だった。
私は両手を合わせると、彼女の口元へ指先を近づける。
軽く“力”を込めると、指先から薄い桃色に煌めく雫が一滴、彼女の少し開いた口の中に落ちた。
(・・・これで、肉体の傷と疲れの方は十分に回復する・・・)
私が今の彼女に出来る、せめてもの行動だった。
その後、彼女を此処まで連れて来たボランティア仲間の女性から話を聞いてみると、やはり私の予想は当たってしまっていたようだ。
彼女達は移動先に着いてすぐに援助活動を始め、順調に活動は進んでいた。
だが、翌日の夜に用を足しに行った春奈さんが翌朝になっても帰って来ていない事が分かり、仲間達で探した所・・・。
「・・・では、その廃屋で・・・?」
「ええ・・・複数の人間に襲われたようで・・・。犯人達は見つかっていません。私が彼女を最初に見つけたのですが・・・」
彼女はそこで口を押さえ、嗚咽と共に言葉を繋ぐ。
「酷い姿でした・・・! 服は全て破り取られて、全身傷だらけで・・・! こんな状況下の時に、どうして、あんな酷い事が出来るのか・・・!」
こんな『状況下』だからこそ・・・なのだ。
極限の状態に置かれた人間は、時として本性を曝け出す。
別段、不思議な事ではない。
ストレスや鬱憤を発散する為に、他者を痛めつけ、苦しめ、嘲笑う。
対象が異性、ましてそれが女性ならば、陵辱行為に走ってもおかしくはない。
あるいは、情勢が混乱しているのをいい事に犯罪を犯す者もいる。
こういった輩は罪の意識も希薄だ。
犯罪行為の露見する確立が、極度に低い状態を狙ってやっているのだから。
そうする事で自分の精神を安定させ、下劣な欲望を満足させる・・・。情けないほどに弱く、惨めで憐れな“陵辱者”。
・・・私の胸の奥底で、“それ”が“ざわり”と蠢く。
“それ”は私の中を駆け巡り、押さえ込んでいる“力”を解放しようと心の内側を舐め回す。
私は“それ”をなだめ、一応の平静を取り戻した。
(この怒りをぶつける者は、私が見つける・・・! 春奈さんを汚した者に、私が相応しい罰を与えてあげましょう・・!)
「警察にも届けたんです。でも・・・まともに取り合ってくれませんでした。この大災害の中だからある意味仕方が無いのかもしれないけれど、ろくに話も聞いてくれなくて・・・。挙句の果てには『アンタの方から誘ったんじゃないのか』とか、『一人でうろつくから』だとか、まるで彼女の方に問題があったように言われて・・・! 彼女はそれまでは気丈に振舞っていたけど、それ以来すっかり元気を無くしてしまって・・・」
これもまた、珍しい事ではない。
警官とて人間だ、自分の処理能力を超えた仕事には関わりたくないと思うのは当然だろう。
だが、警官という職業を自ら選んだ以上、そのような泣き言は許されないはず。
ましてや被害者を気遣うどころか、逆に傷つける事を言うなど言語道断だ。
(・・・罰を与える必要のある者が、増えたようですね・・・!)
私は自分の拳を、知らずに強く握り締めていた。
「・・・それで彼女、そんな事があってから手当てを受けたがらなくなって・・・自暴自棄になってしまったみたいなんです。仲の良かった貴女なら大丈夫かと思って連れて来たのだけど、どうやら正解だったみたいですね」
「ん、そうでしたか・・・」
「もう、帰らせた方が良いと思うのだけど・・・」
「ん・・・本当ならその方が良いのかも知れませんが、帰っても彼女にはご家族がいらっしゃらないのです。支えてくれる恋人でもいれば話は別ですが、彼女は『居ない』と言っていました」
以前、会話の中で彼女がそんな事を言っていたのを思い出す。
一人にするのは、得策では無いように思えた。
「・・・今の彼女を一人にするのは、正直不安です。私がなるべく側に居るようにします、任せてください」
「分かりました。猟華さん、彼女をお願いしますね・・・」
春奈さんを連れて来てくれた人たちは、そのまま自分達の住む本来の地へと帰って行った。
無理もない、こんな事件が身近で起こったのだから。怯えてしまって当然だ。
私は再び春奈さんの所へ行き、眠っている彼女の手を握った。
(春奈さん、ごめんなさい。貴女の記憶を読ませてもらいます)
私は春奈さんの記憶を手探りで探り、ここ数日の体験を覗き見する事にした。
彼女を襲った悲劇、それを作り出した者達を知る為に。
(2へ続く)
あとがき
『淫魔使い』、第二話の始まり始まり~!
今回の主役は清楚なサディスト、猟華さんですw
三人の淫魔の誰かとHできるとしたら、最もためらってしまうのが彼女でしょう。
第一話の『陵辱者よ、淫夢に~』では亀頭に爪を立てたりしてますが、猟華はまだ手加減している方なんですよw
猟華を怒らせるとどうなるか・・・続きは暫しお待ちください。