2ntブログ
アクセスランキング
ご都合主義な官能小説
「こんな都合のいい話あるわけねーじゃん!」 「いいんです!そーいう小説なんですから!(力説)」www 基本的にハッピーエンドの官能小説を書いてます。 座右の銘は『ご都合主義万歳!』www

2024/05 | 12345678910111213141516171819202122232425262728293031

ブログ内検索
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 どれくらいの時間が経ったのだろうか。
 蜜巳は血の混じったザーメンを子宮で飲み干すと、下からの反応が途絶えた事に気が付いた。

「あれ?・・・あ~あ、終わっちゃったかぁ・・・」

 蜜巳が犯していたヒロは、前回同様に肌は張りと艶を失い、げっそりと痩せていた。
 やはり、幸せそうな笑みを顔に浮かべたままである。
 前回と違うのは、今回はヒロがまるで動かない事だ。蜜巳がヒロの上から移動しても、身じろぎ一つしない。
 胸が上下しているところを見ると、死んではいないようだ。

「ん~~・・・本当ならもう十回はしたかったけど、しょーがないわね」

 脱ぎっ放しだった服を着て、軽く身体を伸ばした蜜巳が言った。
 まだ満足しきっていないようである。
 と、ヒロに近づくと、その耳元で囁いた。

「じゃあね、中々良かったわよ。もう聞こえないだろうけど、あなた幸せよぉ?人生最後のセックスがあたしとだったんだから。んふふ」

 何の反応も無いヒロの頬に軽く口づけすると、蜜巳は部屋を出た。
 後に残されたのは、もう何も聞こえず、見えず、喋れず、感じない・・・死人のようになった男が一人だけだった。

 猟華は壊れてしまった獲物の二人・・・シンとトウゴを見下ろしながら呟いた。

「ん、まぁまぁ満足しましたわ。お二人とも、お疲れ様でした。これで終わりです」

 二人からの返事は無い。
 横たわっている二人には、薔薇の鞭による拘束は既にない。それでも、二人は動こうとしなかった。
 トゲによってつけられた傷は、二人の全身を血で滲ませている。
 だらしなく垂れたペニスだけは無傷であり、その為に不自然なくらいに目立っていた。
 血に濡れた身体を横たえ、シンとトウゴは虚ろな目を虚空に飛ばし、狂ったような笑い声を断続的に上げながら泣いていた。
 完全に精神に異常をきたしていた。
 猟華は脱ぎ捨てていた自分の服を着ると、それを暫く眺めていた。
 不意に、フッと微笑むと踵を返し、二人に背を向けて歩き始める。

「ふ、自分がやられて嫌な事は、他人にもしない・・・。こんな当たり前で簡単な事がどうして出来ないのかしら。人間って不思議ですね。さて、罪さんに連絡して、次は加奈子さんの所に行かないと・・・」

 誰に言うともなく呟いた猟華の姿が闇の空間から消える。
 同時に、シンとトウゴも自分達の宿泊している部屋のベッドの上に出現した。
 そのことに気付く様子もなく、二人は相変わらず笑いながら泣き続けていた。


 羽夜の身体に性欲を吐き出し続けていた三人の父親達は、いつしか気を失っていた。

「むぅ~・・・少し不満だなぁ。もうちょっと“食べたい”気もするけど」

 彼らの側に、羽夜が立っていた。
 だが、その姿は十歳前後のものではない。
 十七、八歳ほどの・・・女子高生くらいに体が成長していた。
 その顔には成長前の幼い面影が残りつつ、身体は成熟直前の果実のように芳醇な香を放っている。
 グラビアアイドルと言われたら、疑う者はほとんど居ないだろう。
 猟華の清純さに蜜巳の色香を同量足して二で割ったような、美しくも艶かしい少女だ。

「まぁいっか。これだけ“食べ”れば五日くらいはこの姿でいられそうだし。子供の姿じゃ入れない所に、また罪ちゃんに連れてってもらおっと!」

 軽く右手を振ると、手の中に服が現れた。
 羽夜はサイズがぴったり合ったそれを着ると、元々着ていた服を拾い、倒れたままの彼らに手を振りながら言った。

「じゃーね、おじちゃんたち。気持ち良かったよ~バイバ~イ!」

 にこやかな笑顔で軽く後ろに飛ぶと、そのまま闇に飲み込まれるように消えていった。
 残された三人がほぼ同時に意識を取り戻した時、彼らは元の料亭の部屋に戻っていた。
 服装も元通りになっており、先程までの事は夢だったかのように部屋は何も変わりなかった。
 だが、彼らにはそんな事はどうでもよかった。
 羽夜の姿が無いことに、三人は絶望に近い喪失感を感じていたのだ。

「お、お嬢じょうちゃん!?何処だ!?何処に行ったんだい!?」
「隠れているのかい!?お願いだ、出て来てくれ!」
「ほ、欲しい物があるなら何でも買ってあげるよ!!だから戻って来てくれ!!」

 殆ど悲鳴に近い状態だ。
 その大声に料亭の仲居が数人、慌てて彼らの部屋に駆け込んでくる。

「お客様!?いかがなさいました!?お客様!!」

 が、三人は仲居たちを無視して羽夜を呼び続けている。
 いや、無視をしているのではなく、彼女達が目の前に居るというのに気付いていないのだ。
 彼らの頭の中は、完全に羽夜の事だけで占められていた。
 究極とも至高とも感じた彼女の肉体との交わりは、永遠に続くと思っていた・・・。彼らが勝手にそう思っていただけだが。
 彼らは料亭中で羽夜を呼び、叫び、探し続け・・・それが徒労に終わった時、彼らの中で何かが終わった。全てがどうでもよくなり、虚ろな表情と瞳で座り込み、薄ら笑いを浮かべている。
 呼びかけにも何も答えず、完全に自分の殻に閉じこもってしまった。
 現実に居ないのならば、彼らは思い出の中で羽夜と共に生きるしかないのだ。
 羽夜の居る幻の世界はまさに“天国”、居ない現実は彼らにとって“地獄”でしかなかった。


「ん・・・片付いたようです。ご依頼の件、終わりました」
「そうか。すまなかったね罪君、身内の不始末の尻拭いをさせてしまった」
「お気になさらずに、これも仕事ですから」

 猟華からの“念”による報告を受け、久留間探偵事務所所長、久留間 罪はそう言いながら杯に入った日本酒をぐい、と飲み干した。
 彼は今、都内のある会員制の高級料亭にいる。
 シンたちの父親らが利用した店よりも、ワンランク上の料亭だ。
 彼の前には、白髪交じりの恰幅のいい紳士が同じように酒を飲み干していた。

「まったく、恥さらしもいいところだ!現職の警察関係者や県会議員が、建築会社社長と組んでこんな事を・・・!!出来る事なら私が直接行って、鉛玉をブチ込んでやりたい所だよ!」

 その紳士が物騒な台詞を吐き捨てるように言いながら、罪の差し出した徳利の酒を杯に受け取り、一息に飲み干した。
 豪放な雰囲気の男だ。
 彼の着ている服はブランド物のようだし、腕時計には某有名ブランドのロゴが光っている。
 だが、成金風のようには見えない。目立たず、落ち着いたコーディネイトは彼のセンスの良さを物語っていた。
 罪にあの父親達が料亭で密会をする、という情報を流したのはこの男――警察の上層部の人間でもその存在を極一部しか知らない、ある特別な部署の最高責任者である――だった。
 警察組織の人間が性犯罪を行っていた等というスキャンダルが表に出る前に、彼は連中を極秘裏に処分するよう、罪に依頼をしたのだ。
 “闇に葬ってくれ”、と。
 紳士が就いている役職の代々の者と、罪の一族は、遥か昔からこういった関係だった。
 すなわち、『依頼をする者』と、『依頼を遂行する者』だ。

「だが、これで一安心だな。連中にはふさわしい“生き地獄”をこれから死ぬまで味わって貰おう」
「そうですね。ですが、あなたはこれからが大変ですね」
「なに、どうと言う事はない。何しろ連中は勝手におかしくなって、勝手に専門の病院に閉じ込められるんだからな」

 紳士と罪は笑いあい、うまそうに酒を酌み交わす。
 が、すぐに表情を引き締めて罪が言った。

「ところで、既に殺されてしまった女性達の遺体についてですが・・・」
「それなんだが・・・出来れば遺族の元へ帰してやりたい・・・。しかし、犯人の事を公表する訳にはいかんし・・・」
「では、こういう感じではいかがでしょうか?」

 罪の話を要約すると、こうだ。
 被害者の遺体は、青木が原樹海などの自殺の名所に運び、自殺という事にする。
 遺体が発見されたと遺族に連絡が行く事になるが、その直前に、遺族の枕元に被害者の“御霊(みたま”に立ってもらい、『自分は自殺した』と嘘の告白をしてもらうというのだ。
 紳士は耳を傾けて聞き入っていたが、心配そうな顔をして腕を組んで唸る。

「う~む・・・。そんな方法で、遺族が納得してくれるかね・・・?」
「勿論、お詫びと協力の意味の謝礼が被害者の『遺産』として遺族に支払われます。『久留間財団』が運営しているファンド会社からね。被害者達は財テクをしていた事にして、死亡時に運用がうまくいったという事で、最低でも五千万は支払うようにします。以前にも同じ手を使って上手くいきました。既に被害者の御霊には話して了承を得ていますし、術を使って遺族に確実に言葉が伝わるようにします。それに、例え上手くいかなかったとしても・・・」
「確認する方法は遺族の方達には無い、か・・・」
「要するにお金で解決する方法ですから、自分としても抵抗はあるのですが・・・」
「・・・分かった、その方法でもう一仕事頼むよ」
「承知しました」
「話は変わるが、たまにはご実家に顔を見せてやったらどうかね?先月挨拶に伺った際、妹さんが心配なさっていたよ」

 不意な言葉に、罪の表情が曇った。

「・・・そうですか・・・」
「ああ、いや、すまん。君のプライベートな事に首を突っ込むつもりは無いんだが・・・」

 バツが悪そうに頭を掻きながら紳士が謝罪した。

「いえ、いいんです。・・・いずれ、会いに行きますよ」
「・・・ん、そうか」

 彼はそれ以上、罪の事で話すことはやめた。が、今度は顔を綻ばせて罪の前にドン!と日本酒の瓶を置いた。

「よし、今日は厄介な問題があらかた解決したんだ、トコトン飲むぞ!勿論付き合ってくれるよな?罪君!」
「え!?い、いや、自分はこの辺で・・・」
「まぁそう言うな!オーイ女将!酒をありったけ持って来い!」

 血の気が引く音が聞こえるかと思えるほど、罪の顔が見る見る蒼白になっていく。
 この紳士、酒に関しては途轍もない酒豪なのだ。
 彼に付き合わされて酒を飲んだ人間は例外なく酷い二日酔いに悩まされ、口々に言う。
『二度と、あの人とは飲みたくない・・・』と。

「三人娘が居ないのが残念だがなぁ!彼女達だけだからな、俺と朝まで飲み明かす事が出来たのは!」

 過去、彼に付き合う事が出来たのは三人だけである。
 そう、蜜巳・猟華・羽夜の三人だ。
 つまり、彼の酒飲みとしてのレベルは人外の領域に達しているのだ。
 罪が蒼白になったのも無理はない。
 結局、罪は脱出に失敗し、また壮絶な二日酔いに悩まされる事になったのだった。


 河井真由美が目覚めた時、自分が何処にいるのかすぐには分からなかった。
 見覚えのある風景に起き上がり、よくよく見てみればそこは両親と共に暮らしている自分の部屋である。彼女は先日外出した服装のまま、ベッドの上で眠っていたようだ。

「え・・・あれ?私は・・・」

 ゆっくりと眼が覚める前の記憶が甦ってくる。

(私は・・・あいつらの所に行って・・・。何で自分の部屋に?・・・まさか夢!?)

 傍らに置いてあったバッグの中を探ると、用意していたナイフやスタンガンがそのまま入っている。
 携帯電話の日付を確認すると、あのウィークリーマンションに向かった日の、翌日になっていた。
 化粧台の鏡を見ても、シンに殴られた筈の顔には何の傷跡も付いてはいなかった。

「どういう事?・・・私、行ったつもりで・・・行った“夢”を見ていたの?」

 混乱する真由美に、部屋の外から母親の慌てた声が響いてきた。

「真由美!?帰って来てるの!?返事なさい!」
「う、うん!帰ってるよ!」
「急いで支度して!病院に行くわよ!」
「病院・・・?加奈子がどうかしたの!?」

 ドアを開けながら聞いた真由美の目に、大粒の涙を流している母親の姿が映った。

「加奈子の意識が戻ったって・・・!今、病院から連絡が来たの・・・!良かった、本当に良かった・・・!!」
「加奈子が・・・!」

 奇跡だった。
 医者からは、時間をかけてゆっくり治療するしかないと言われていたのだ。
 その加奈子が、こんなにも早く、しかも突然回復するとは。

「私達に会いたがってるって。お父さんは会社を早退して、もう病院に向かってるわ。とにかく急いで、私達も行くわよ!」
「わ、分かった!」

 服を着替え、簡単に身支度を整えると母親と共に家を飛び出し、既に呼んであったタクシーに乗り込んで病院に向かった。
 その姿を物陰から見ている人物が居た。蜜巳・猟華・羽夜である。

「これで一件落着ってとこかな?」蜜巳が言う。
「ん、まだ被害者のご遺体の事が残ってます。でも、私達はご遺体を“動かす”だけですから、さほど手間は掛からないと思いますよ。“今の”私達なら」猟華が答えた。
「おなか一杯、とは言えないけど、エネルギー十分だもんね~」と、これは成長した姿の羽夜だ。
「あ、そうだ。ねぇ猟華ちゃん、加奈子さんは全部思い出しちゃったの?」
「いいえ、事件の部分の記憶は消してます。もう思い出す必要も無いでしょう?」
「そうだね!」

 猟華が微笑みながら羽夜に答える。
 真由美の顔の傷を治し、加奈子の治療をして意識を回復させたのは猟華だったのだ。

「こう言っちゃ何だけど、あたし達もサービス精神旺盛だよね~。悪者退治に被害者救済までやっちゃうんだから」
「蜜巳ちゃん、それは当然だよぉ」

 蜜巳が頭の後ろに両手を組みながら言った言葉に、羽夜が言う。

「久留間探偵事務所は、アフターフォロー万全なんだから!でしょ?」
「・・・うん、そうだね」
「ん、その通りです」

 羽夜の言葉に、蜜巳と猟華は微笑む。
 彼女達は“淫魔”・・・れっきとした魔族の一員であり、人間ではない。
 使役者である久留間 罪と共に、“罪人”を狩る事で現代の人間社会に生きている。
 彼女達にとっての“獲物”とは主に性犯罪者の事であり、それを陵辱する事によって“精”を得て自らの“糧”とする・・・趣味と実益を兼ねた稼業という訳だ。

「んじゃ、もう一仕事して帰ろっか。そうだ、明日は行きつけのホールで月イチのイベントだから、下見しとかなきゃ」
「え、またパチスロですか?」
「んにゃ、今回はパチンコの方。イベントの時はちゃんと釘をいじる優良店なんだよねぇ~!んふふふっ、たーのしみぃ~♪」
「蜜巳ちゃんも好きだね~。どこが面白いんだか」
「羽夜も連れてってやろっか?」
「ヤダよぉ、あんなタバコの煙で一杯なとこ!」
「あははは。まぁ、今の羽夜じゃちょっと無理かな。もうちょっと大人びないと」
「あ、遊ぶのはいいですけど、あんまり“力”を使っちゃダメですよ?フェアじゃないと」
「分かってるって、十万負けるまでは使わないからさ!」

 悪びれずに言う蜜巳に猟華が溜め息をつく。
 それを見て、羽夜が明るい笑い声を上げた。


 エピローグ


 真由美が久留間探偵事務所を再び訪れたのは、加奈子が回復してから一ヶ月ほど後のことだった。

「ん、そうですか、加奈子さんはもうすっかりお元気に・・・」
「ええ、どういう訳かあの事件のことを綺麗に忘れてしまっているんです。お医者さんの話では、人間の精神は強過ぎるショックを受けた時、正気を保つ為にその部分の記憶を消してしまう事があるそうなんです。加奈子のケースもそれではないかと・・・」
「良かったですね、河井さん」
「ええ!」

 真由美は猟華の入れたお茶を手にしながら、事務所の面々に晴れ晴れとした表情で言った。
 所内には所長の罪と、蜜巳と猟華がいた。
 羽夜は隣室でまだ眠っている。先日、蜜巳がパチスロで大勝ちしたのでまたも宴会になったからだ。
 罪も本当は二日酔いで頭が痛いのだが、客人の前で辛そうな顔を欠片も見せていないのは大したものである。

「それで、あの男達の事なんですが・・・なにかご存知ありませんか?」
「なにか、とは?」

 真由美の問いに、罪が小首をかしげる。

「いえ、その・・・。あいつら全員、加奈子が意識を取り戻した当日に、精神病院に入ったらしいんです。噂ではかなり酷い状態で、重度の患者専門の監獄のような病院に強制入院させされたとか・・・。家の方もひっそりと静まり返っていて、近所の方に聞いたらいつの間にか引っ越したそうです」
「それはまた何とも・・・奇妙な話ですね。こちらではご依頼の件が済んで以降、彼らについては何も調べていませんでしたので・・・」
「そう、ですか・・・そうですよね」

 罪の返事に落胆したような、安心したような・・・複雑な表情を浮かべる。
 彼女は罪たちが連中に何かをしたのでは、そう思って訪ねて来たのだった。

「加奈子さんは正気に戻り、犯人と思しき連中は監獄同然の病院の中・・・。“天罰”でも下ったんじゃないですか?」
「“天罰”・・・。そうですね、誰かが、下したのかもしれませんね」

 蜜巳が薄く笑いながら言った言葉に、真由美が呟くように答えて意味有り気に罪たちの顔を見渡す。
 目をつぶって微笑むと、真由美は立ち上がった。

「お忙しいところ、お邪魔致しました。そろそろ失礼します。今日は久しぶりに家族揃って食事をしに行くんですよ」
「ん、そうですか。・・・本当に幸せそうですね。河井さん」
「ええ、本当に・・・!夢の中に居るような気分ですよ」

 満面の笑みを浮かべ、真由美は事務所を後にした。
 入れ替わりに、隣室から寝ぼけ眼の羽夜が入ってくる。

「おはよ~・・・。朝ゴハンはぁ?」
「もうすぐ昼だぞ・・・う、頭いてぇ~・・・。猟華、薬おくれ・・・」
「あ、はい」

 罪の前に二日酔いの薬と水の入った湯飲み茶碗を置いた猟華の視界に、ビルを出て行く真由美の姿が映った。
 立ち去って行く彼女の後姿を窓から眺めながら、猟華が呟いた。

「ん、“夢”の中、か・・・」
「どしたの?猟華」
「あ、いえ・・・。さっきの真由美さんの言葉で思ったんですけど、私達が狩った“獲物”たちって、今は“夢”の中に居るようなものだなって思ったんですよ」
「“夢”?」

 羽夜がきょとんとした顔で聞いた。

「ええ。決して終わらない“淫らな悪夢”・・・“淫夢”とでも言いましょうか」
「“淫夢”か、確かにそうだね」

 蜜巳が艶かしい笑みを口元に広げた。

「朽ち果てるまで、“淫夢”の中で狂ってりゃいいのさ。バカな事やった人間にはお似合いだよ」

 三人の淫魔が薄く笑う。
 酷薄な、陰惨な、残酷な・・・そして狂気を誘う、淫靡な笑みだった
 その笑みを眺めながら、罪が言った。

「お前達にとっては、どっちが“夢”のような世界なんだろうな。この“人間の世界”と、“魔界”とで」
「そんなの決まってんじゃん。罪が居る“ここ”があたし達にとって、“夢”の中のように居心地が
いい世界だよ」

 蜜巳が罪の側に来て、頬を赤く染めながら唇にキスをした。
 濃厚なディープキス・・・ではなく、恋人が恥らいながら交わすような、たどたどしく、初々しいキスだった。

「あ~!蜜巳ちゃんズルイ!!羽夜もする!!」
「む、抜け駆けは許しませんよ!」
「ちょ、ちょっと待むぅ!」

 罪の唇に、頬に、額に、首筋に、淫魔たちのキスが降り注ぐ。
 まるでいやらしさを感じない、優しい、柔らかなキスの雨。
 彼女達は淫魔、人外の化生。
 だが、淫魔たちは思う。
 いつまでも、罪と共にこの世界に居られるように、と。


 淫魔使い――陵辱者よ、淫夢に笑いて朽ち果てよ――END



あとがき

 や・・・やっと終わった・・・orz
 現実世界で色々と忙しくて、全然進みませんでした。
 最近、仕事が落ちついて暇が出来てきたので、ようやく再開する事が出来ました。

 この小説は人間社会で生きる淫魔たちと、その使役者の懲悪物のお話です。
 悪を懲らしめると言えば聞こえは良いですが、やってる事は中々エグくて外道ですw

 以前の記事にも書きましたが、鬼畜・陵辱系の物語やゲームの主人公って正に『ご都合主義』なんですよね。
 陵辱する主人公は欲望を満たすだけ満たし、犠牲となる女性キャラは奴隷化したり、妊娠させれてもなお犯され続けられるのでした、ハイ、終わりって感じで(中には主人公が改心してハッピーエンドになる話もありますが)。

 私も男ですし、そういった話に興奮もします・・・が、どーにも後味がよろしくない。
 何故そう感じるのか・・・やりたい放題陵辱する主人公に感情移入できない上に、罪の報いをなんら受けずに話が終わるのに納得がいかないのです。
 これは現実の世界でも、その傾向があるように思います。

 日本は犯罪者に甘く、被害者に厳しいんだとか。
 酒飲み運転で事故を起こしても、未成年がリンチ事件起こして被害者の人生ボロボロにしても、レイプした上に殺してコンクリートに詰めて捨てるなんて事をやったとしても、やれ心神喪失状態だっただの、やれ未成年だので想像以上に軽い刑罰ばかり。

 ぶっちゃけ、屁理屈こねてるようにしか聞こえません。
 そんな事が理由になるか!罪は罪だ!もっと重く、相応しい刑罰にすべきじゃないか!?
 最近の凶悪犯罪の増加や低年齢化が進む中で、そう思うのは、私だけではないでしょう。

 そんな私の気持ちの代弁者として生まれたのが、蜜巳・猟華・羽夜の三人の淫魔と、その使役者である久留間 罪です。
 こいつらに、悪党(主に性犯罪者)に対する慈悲はありません。トコトンまでヤッちゃって貰いますw
 ただし、滅多に殺したりはしません。悪人であればあるほど生きたまま苦しめます。

 ・・・うぅむ、自分で書いてて何だが、エグぃなぁw
 まぁ、下手なエロ小説書いてる奴が何言ってんだと突っ込まれそうですが、そんな事を考えてしまう訳でして。

 罪たち久留間探偵事務所の面々は、これからも活躍します。
 それぞれの淫魔との出会いのエピソードや、久留間一族の秘密、罪の妹の事などなど・・・。
 書きたい話が沢山あります。

 次回、第二話がどんな話になるかはストーリーを練ってる状態です。
 いつになるかはまだ分かりません。
 読み切りの話も書きたいですし、『義妹、紅葉の恋』の続編とかも・・・。
 その時は、良ければまた暫しお付き合いください・・・。

 では、寝ます、オヤスミナサイ・・・(実はただいま夜勤明け、眠い~!www)。

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する